ウェルネオシュガー株式会社らとの共同研究成果がJournal of Applied Glycoscienceに受理されました。
Kamiyama E. et al., Butyrate production from isomaltodextrin via cross-feeding between human intestinal anaerobes. Journal of Applied Glycoscience, accepted (2026).
糖質化学研究室とウェルネオシュガー株式会社、宇都宮大学、国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所の研究グループは、食物繊維の一種であるイソマルトデキストリン(IMD)が、腸内細菌同士の協力によって利用され、腸内環境の改善に重要な短鎖脂肪酸「酪酸」の産生を促進することを明らかにしました。酪酸は大腸の主要なエネルギー源であり、腸の健康維持や炎症抑制などに関わる重要な代謝産物です。しかし、IMDのような複雑な構造をもつ難消化性糖質は、単一の腸内細菌だけでは十分に分解・利用できないことが知られています。本研究では、複雑な糖質を分解する腸内細菌 Bacteroides thetaiotaomicron(Bt)と、酪酸を産生する Faecalibacterium duncaniae(Fd)を用いた共培養系を構築しました。その結果、単独ではIMDを利用できない Fd が、Bt と共存することで増殖し、酪酸産生量が大幅に増加することを発見しました。さらに解析の結果、Bt がIMDを段階的に分解して生じるオリゴ糖が、Fd の栄養源として利用されることが示されました。つまり、腸内細菌同士が役割分担を行う「クロスフィーディング(栄養共生)」によって、IMDから効率的に酪酸が生み出されることが明らかになりました。本研究成果は、難消化性糖質の機能を正しく評価するためには、個々の細菌ではなく、腸内細菌群全体の相互作用を考慮することが重要であることを示しています。今後、IMDをはじめとする機能性食物繊維の新たな健康効果の解明や、腸内環境改善を目的とした食品開発への応用が期待されます。
また、本研究は本学食農学類一期生である神山恵美莉さんの卒業研究・修士研究として実施されたものです。神山さんは、腸内細菌の培養方法も分からないところからスタートし、多くの先生方のご指導を受けながら研究を進めてきました。新しい分野への挑戦は決して容易ではありませんでしたが、一歩一歩着実に成果を積み重ね、本研究成果へとつながりました。神山さんの日々の努力と粘り強い取り組みに、指導教員として心から敬意を表したいと思います。