15年越しの挑戦と約束の結実:キチンオリゴ6糖ゲル化現象の解明に関する研究がCarbohydrate Polymersに受理されました。
Kono H. et al., Thermoresponsive hydrogelation of N-acetyl chitohexaose: Gelation mechanism and application in controlled protein release. Carbohydrate Polymers, 366, 123897 (2025).
https://doi.org/10.1016/j.carbpol.2025.123897
本論文は、尾形と苫小牧工業高等専門学校の甲野裕之先生が共同責任著者を務め、福島大学、苫小牧高専、北海道大学、静岡大学による共同研究として実施されました。研究の端緒は15年以上前に遡ります。静岡大学農学部生物化学研究室の碓氷泰市教授(現・名誉教授)と服部武史博士が、キチンオリゴ6糖を水溶液中で冷却すると溶解し、加温するとゲル化するという現象を発見したことがきっかけでした。2012年に私が静岡大学を離れる際に、碓氷先生から「この研究だけは、しっかりと決着をつけてほしい」という言葉を受け、今日まで研究を続けてきました。非常にシンプルな現象ではありますが、論理的且つ化学的に証明をするとなると、非常に難しく、何年間もまったく進展のないときもありました。そうした中、別の共同研究を通じて親交のあった苫小牧高専の甲野先生との何気ない会話の中で、この研究のことを話題にしました。なぜあの時、少し諦めかけていたこの話をしたのか、よく覚えていないのですが、頭の片隅に碓氷先生と交わした約束が残っていたのかもしれません。そして何より幸運だったのが、甲野先生が本研究のブレークスルーとなる研究手法を私に提案し、見事に証明して下さったことでした。本当に多くの先生方や学生さんのご協力もあり、ようやく形にすることができました。改めてになりますが、甲野裕之先生には心から感謝致します。また本論文は、日本の糖質科学研究に大きな貢献を果たしてきた静岡大学碓氷研究室の集大成とも言える内容になっています。ご興味のある方は、ぜひオープンアクセスの本論文をご一読いただければ幸いです。